簿記は Book keeping の訳であり、帳簿記入を略したものだと言われています。ですから、『簿記とは何?』 と聞かれれば、簡単に『帳簿を記入すること』と答える事ができます。『何だ、たいした事ないな』と思われるかもしれません。(実際、簿記の基本ルールは非常にシンプルです。)
しかし、何でも記入すれば簿記となるのかと言えば、そうではないのです。ある記入が簿記であるためには、以下の条件を満たしている必要があるのです。
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社長も小さい頃、日記を付けてた記憶があると思いますが、日記はどうでしょう。上記のうち、経済活動の記録・金額による記録の条件を満たしていないので、残念ながら簿記とはいえません。では、『お小遣い帳』についてはどうでしょうか。これは、上記の条件を満たしているので簿記といえます。
同じように、家計簿をつけることも簿記といえます。
『お小遣い帳』 や 『家計簿』 をつけるということは、身近な簿記と言えるでしょう。お小遣い帳』 や 『家計簿』 をつけるのを簿記というのなら、わざわざ簿記を習わないでも、常識の範囲で記入できます。しかもその書き方は、いちいち指示されなくても自分の思うように書けばいいのです。
そう考えますと、簿記には何やら 『特別に習わなくても、常識の範囲内でできるもの』 と、『ある程度学習が必要で、共通のルールに従って行うもの』 との二つがあることに気が付かれるのではないでしょうか。これが、単式簿記(前者)と複式簿記(後者)の違いになります。
複式簿記の最も特徴的なところは、 『損益計算と収支計算を同時に行う』 ということです。
この損益計算と収支計算を同時に行うことにより、企業の 『一定時点での財政状態』 と 『一定期間の経営成績』 を明らかにすることが可能になるのです。
複式簿記のなかにも、適用する業種により次のような種類があります。これから、単に『簿記』と書いた場合は、この 『商業簿記』 のことを指していると思ってください。
簿記の種類 |
商業簿記 会社 商店 お店など 工業簿記 製造業 メーカー 銀行簿記 銀行 |
『損益計算』と『収支計算』 ということですが、初めて聞かれた方は 『何それ?』 と思われるかもしれません。
簡単に説明しますと、損益計算とは 『いくら儲かったのか』を計算することで、収支計算とは『(お金は)いくら残高があるのか』を計算することです。
簿記は、13世紀初めのイタリアでフィレンツ、ミラノなどの北方都市を中心に、商人たちが商売上の取引を記録しておくために生まれてきたものです。
最初は備忘録みたいなものだったのでしょう。人間の記憶には限界があり、お互いの貸し借りで争いになった時のための証拠書類として、これらの記録すなわち帳簿がつけられていました。いわば公正証書としての役割を果たしていたのです。専門的に言えば、簿記は債権・債務の備忘録、又、その決済の証拠ないし公正証書として、歴史の舞台に登場してきたということができます。
14~15世紀頃になると、商人の間で簿記は広く使われるようになり、数学者ルカ・パチオリの著書「算術幾何比例総論」の中で紹介され、その後ベニス式簿記法としてヨーロッパ中に広まっていきました。
※簿記の起原については、大別すると古代ローマ説と中世イタリア説とがあります。古代ローマ説は、簿記の起源を古代ローマの奴隷とその主人との関係のなかに求めるもの、中世イタリア説は、その当時の企業の帳簿記録の史料のなかに簿記の存在を認めるもので、今日の通説、いわゆる多数説といわれています。 |
日本に複式簿記が本格的に導入されるのは、明治維新以降のことで、広く普及していくのは明治6年に、福沢諭吉がアメリカの商業学校用簿記教科書を翻訳した「帳合之法」 を出版してから後のことです。この 「帳合之法」の出版と同じ頃、イギリス人アレクサンダー・アラン・シャンドの「銀行簿記精法」も出版されました。
前者は、ただの訳書ではなく、日本に新しい企業精神を芽生えさせようという理想のもとに書かれたもので教育界に、後者は、銀行実務界に大きな影響を与えました。
これらの本が、わが国における簿記の発展の基礎となったということです。では、次回をお楽しみに。
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近畿税理士会