まずはじめに、「租税」とは、いつ頃、どこで、どのようにして出来たのでしょうか?
租税の歴史を振り返る場合、貨幣だけでなく物納や労役も含めると、その起源は紀元前、いや原始時代にまで遡ります。
人類が地球上に誕生した時期については、約200万年前と言われていますが、その人類が、人として家族、集落、そして共同社会を作り、共同生活を始めた時期は、いわゆる狩猟時代、放牧時代を経て、農耕時代に入って地域に定着してからだと考えられています。
そういうわけでまず始めに、原始時代(狩猟時代)から振り返ってみますと、外敵からの侵略を防止するための労役負担が考えられます。あるいは外敵からというよりも、もっと前は野獣(マンモス、熊など)から自分たちの暮らしを守るための労役負担だったのではないでしょうか。これが、労役に伴う租税負担だったと考えられます。
そして、農耕時代(紀元前7000~8000年頃)に入り、だんだん分業化してきて、私は頑張ってお米を作っているから、あなたは見張り番してくれないかと、その代わり私は作った米を出すからと。こうして労役負担から物納になり、そして進化していって、いわば共同社会みんなの共通した経費というものを租税(貨幣)で賄おうということになっていったのではないでしょうか。簡単に言うと、(労役から物納、そして貨幣へと)これが税の歴史のはじまり(根源)とでもいうべきものだと考えられます。
このような遠い昔から、長い歴史の中で、さまざまな出来事と関わりながら、租税は大きく変貌を遂げてきました。ヨーロッパでは、絶対王政の崩壊が近代的な租税制度の幕開けとなりました。わが国では明治維新です。そして、現在の租税制度は過去とは比べられないほど精緻で公平なものになりました。
しかしながら、租税に対する国民のイメージは昔とあまり変わっていないようです。「租税」、「税金」という言葉からは、「高い」、「負担が重い」といったイメージが思い浮かぶのではないでしょうか・・・・?。
納税者にとって租税は嫌われものであり、「トウゴウザン」や「クロヨン」という言葉からもわかるように、不公平や、また難しい、煩わしいといった声も聞こえてきます。そして、このようなことが重税感、不公平感を助長することになり、結果として、納税者の過剰反応を引き起こしています。
ひどい話になると、例えば、所得税を納めていない低所得者までが所得税の重税感を訴えています。
私たちは、国民の義務(憲法30条)として、生まれてから死ぬまで生涯「租税」と付き合っていかなければなりません。単に、先入観から嫌ったり避けたりするのではなく、一度は「租税」と正面から向き合っていきたいものです。
そして、租税を理解し、正しい知識を身につけることによって、少しでも重税感や不公平感を払拭すると共に少しでも誤解を解きたいものです・・・・
そのためにのお手伝いが出来ることを確信しています。
このように、「租税」という考え方は、はじめから人間の歴史のなかに存在しています。その意味でも、『租税の歴史は人間社会の歴史』である。と言えると思います。
このあたりのことを、うまくまとめてあるHPがありましたので引用させてもらいました。
税金の制度は、大昔、人々が共同で猟(漁)をしたことが始まりです。一人ではできないことをする時に、皆で協力して仕事をしたのが始まりですが、そのうちに会費とか分担金という形で物やお金を出し合うようになりました。 みなさんは、貝塚のことを習ったと思いますが、日本にある貝塚の中で鯨の骨が丸々一頭分見つかった貝塚はありません。このことからも、幾つもの村が協力して鯨を捕っていたことがわかります。 日本の税に関する最も古い記録を調べてみると、中国の古い歴史の本『魏志倭人伝』に出てきます。この本には、3世紀ごろの弥生時代の女王卑弥呼が支配する邪馬台国には建物や倉庫があり、そこに「租」と呼ばれていた税を納めていたと書かれています。 この時代の税は、今のようにお金で納めていたのではなく、水田でとれた収穫物で納められていました。弥生時代には、稲作が始まり「村」がつくられるようになりました。そこで、用水路をつくったりする共同作業も一つの税と考えられます。また、そのころには、貧富の差がしだいにでき始め、支配する者とされる者との関係ができてきたこと、稲作や「村」の方針を決めるのに「占い」が使われ「神」という考えができてきたことにより、支配者や神に対する貢ぎ物として、税が現れてきたのでしょう。 それより前はどうだったか不明ですが、人間はひとりでは生きていけません。たくさんの人と助け合って社会の中で生きています。(東京都主税局のHPより) |
コラム イエスもちゃんと税金を納めていた・・・・? 世界最古の書物と言われている『聖書』(※1)にはイエス・キリストの租税に対する見解が述べられているそうです。(マタイによる福音書第22章17-21節)また、我が国最古の書物である『古事記』(※2)にも、租税に関する記述がたくさんあります。 ※1 聖書は、旧約聖書(39卷)と新約聖書(27巻)の二部からなっており、旧約はイエス・キリスト以前、新約はイエス・キリスト以後に書かれたもので、旧約聖書の、その最も古い部分は紀元前1500年頃(今から3500年ほど前)に書かれ、それ以降約40人の著者たちによって1600年かかって書き続けられたれたと言われています。 古事記が8世紀のものであることと比べると、それより2000年以上古く、気の遠くなるような遠い、遠い昔です。 ※2 古事記は、稗田阿礼が語り、太安万侶が記した全3卷の神話、歴史書で712年に編纂されたと言われています。 |
次回は、世界と日本の「租税の歴史」について、説明する予定です。
「租税の歴史」を始めるにあたり、参考にさせていただいた文献等は、以下のとおりです。
エピソードで綴る税の日本史(租税史研究グループ)ー大蔵財務協会
租税論(菊池祐子・小野塚久枝共著)ー税務経理協会
世界の税金物語(三浦一郎)PHP研究所
日本の税制(稲垣光隆)財経詳報社
税金こぼれ話(吉國二郎)財経詳報社税法通論(井上隆司)税務経理協会
租税(佐藤和彦)東京堂出版
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