前回で、「租税の歴史は人間社会の歴史」である。と言いました。
一方、「人類の歴史は戦争の歴史」と言われることがあります。租税が戦争と強く結びついてきたのも事実で、新たな租税の導入理由の多くが戦争だからです。また、租税は、徴税の基礎となる、古代ローマの人口調査や中世イギリスの土地台帳のように、行政面においても多大な貢献をするとともに、その他、さまざまな歴史的出来事とも関わってきました。
そういう意味では、「租税の歴史は、歴史そのものである」と言っても過言ではありません。
ここで、「租税」が歴史の中で重要な役割を果たしてきたいくつかの事例を紹介します。
例えば、外国の歴史をみても、この租税制度改革の歴史において、最も古く、かつ代表的なものとして、
我が国では、江戸時代の農民の一揆は、凶作にもかかわらず、領主が農民から苛酷な税を取り立てたためといわれています。(江戸時代だけでも、百姓一揆は1300件以上が記録されているそうです。)
「税金」というと、とかく敬遠されがちなのは、このような過去の歴史にあらわれた租税の暗い面に原因があるのでしょうか・・・・。
最近の日本にも税による政権崩壊の歴史があります。一般消費税で大平内閣が、売上税で中曽根内閣が、消費税で竹下内閣が、国民福祉税で細川内閣が潰れました。橋本内閣も消費税アップという経済政策の失敗で潰れました。為政者にとって「税」は、「国家なり」というより「恐ろしい」ものなのかもしれません。 |
つまり、これらの時代における税金は、政治を行う権力者が、国民に何の相談もなく、一方的にきめて取り立て、また、その取り立てた税金は、国民のためというよりは、むしろ支配者の利益のために使われていたからです。したがって、当時の税金の仕組みや役割は、現代におけるそれとは、まったく違った内容でした。
近代的な租税制度へのあゆみは、政治が民主的に行われるための改革と軌を一にして行われてきたのです。
では次に、日本の租税の歴史を簡単に見てみましょう。
我が国でも、その歴史は古く、邪馬台国にまでもさかのぼります。今から1300年以上の昔(古代)、大化の改新(西暦645年)以前には、すでに「税(たちから)」、「役(えだち)」、「調(みつぎ)」のような形で租税が存在していました。昔は、穀物が生活する上で、非常に重要でしたので、穀物を納めさせるようにしていました。
※邪馬台国… 女王、卑弥呼が支配する国。30ほどの国々をしたがえていた。
その後、全国一元的な税制は、「大化の改新」に始まり、8世紀初め、中国の制度にならっての大宝律令(で)によって「租・庸・調」の制度が定められ完成しました。農民には、さらに,これに加えて,兵役などの義務が課されていました。当時の租税は、租・庸・調・雑ようといった稲、布、特産物、労役などで納められていました。(簡単に言えば「祖」は稲の物納、「庸」は勤労奉仕、「調」は地方の特産物の上納のことです)
その後の主なものは、戦国時代・豊臣秀吉の太閤検地による全国規模の統一税制。そして、明治時代に入り、地租改正による近代的な税制がはじまり、第2次世界大戦後の昭和24年(1949)、信頼関係を基盤にした「シャウプ勧告」をベースにした「申告納税制度」により現在の租税体系が整備されています。
以上見てきたように、「租税の歴史は、人間社会の歴史であり、そして歴史そのもの」でもあります。
そして税とは本来、「公共の費用(コスト)の国民負担(会費)」であり、そのコストは国民の幸せのために使われるべきものなのです
コラム 1)古代エジプト 古代エジプト時代にはすでに、賦役提供を中心とした租税、ギリシア、ローマでは財産税と間接税の芽生えもあったとされています。ローマ末期には不動産税や人頭税が導入されていたようです。 2)中国・紀元前 中国では二千数百年前、紀元前の中国の古典に「税」という文字が初めて登場してきます。「老子」という書物のなかで、「民の飢うるは、その上の税を食むことの多きをもってなり」と述べて、お上を批判しています。「お上が税金をたくさん取りすぎるから、人民は飢えてしまう」という意味で、中国でも古くから納税者と徴税者との対立があったことがわかります。 3)日本・弥生時代(紀元前3世紀ころ~紀元後300年ころ) 我が国の「租税」の歴史は邪馬台国にまでもさかのぼります。3世紀のはじめ、邪馬台国という国があり、卑弥呼という女王が国を治めていたことが中国の三国志という歴史書の中の「魏志」倭人伝(正式には『魏書東夷伝倭人条』)に書かれています。(倭人…日本人のこと) この書物の中に「祖賦を収む」とあり、税(食糧など)を集めて、納めていたことが記されています。 これが、日本の税に関する最古の記事です。収穫の一部が、税として納められていたことがうかがます。 |
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